恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
そして、ようやく明日から冬休みというクリスマスイブ。
いつものように放課後の教室へと赴いていた真琴は、一つ大きな山を越えられたような気持ちで溜息をついた。
こんなにも長期休暇を心待ちにしたことは、真琴がこれまで教師を続けてきた中でも経験がない。
例年の真琴ならば、しばらく会えなくなる生徒達のことが気になり、年賀状も送るのだけれど、今年はそんなことを考える余裕さえもなかった。
自分の体が自分のものではないような感覚――。
こんな状態がいつまで続くのだろうと不安にもなるが、これも自分の中に息づいている小さな命が、懸命にその存在を訴えかけているのだと思うと、真琴はその体の辛ささえ愛しく感じられた。
――和彦さんの一部が、ここにいる……
古庄が傍にいなくても、いつもこうやって一緒にいられる…。
この存在は、いつかは真琴から離れていってしまうけれども、それまではこのかけがえのない体験と時間を大切にしよう…。
そう思いながら、列の乱れた机を一つ一つ並べ直す手を休め、真琴が愛おしむように自分のお腹に手を当てた時、人の気配を感じた。