恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
放課後の教室には、時折古庄が姿を見せることがあるので、真琴はこの時も古庄だと思い、優しく穏やかな表情で顔を上げた。
…すると、教室の中に立っていたのは、古庄ではなかった。
予想が外れて、真琴の穏やかな表情は一瞬硬直したが、すぐにほのかな笑みを作って声をかける。
「高原先生、今年は先生に副担任をしてもらって、本当にお世話になりました。また来年、3月までよろしくお願いしますね」
高原は、声をかけられても思いつめたような表情で佇んでいる。
真琴が気まずさを払しょくするために、取って付けたような社交辞令を言っていることは分かり切っていた。
「……3月まで…なんですか?4月になって僕が副担任じゃなくなったら、もう僕なんてどうでもいいんですか?」
卑屈とも取れる高原の言動に、真琴は顔を曇らせた。
高原は職員室では話せない…言いたいことがあって、わざわざここへ来たのだ。
真琴はそのことに勘付いて、少し怖くなってくる。
「そんなわけないでしょう?4月からだって高原先生とは、同僚として一緒に頑張っていきたいとは思ってる」