恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



「……でも、賀川先生はあれからずっと、僕のことを避けてますよね?」



あの秋の日の夕方に、この教室で告白をして以来、真琴から必要以上の接触を避けてられていることは、高原自身も気づいていた。


そして真琴も、そのことについては否定できなかった。
自分に想いをかけられていることを知ってから、真琴はそれまでと同じように接することが出来なくなっていた。


どんなに想われても、高原の想いに応えることはできない…。
加えて、最愛の古庄がそのことについて気にしている…。


それらのことが頭に過ると、高原とどう接していいのか分からなくなった。




不器用な真琴には、何事もなかったようにそつない態度をとることが難しく、逆に、不自然ともいえる素っ気なさで対してしまっていた。


「…そんな風に感じていたのなら、ごめんなさい……」


真琴は神妙な顔でそうつぶやくと、唇を噛んだ。
けれども、謝られたにもかかわらず、高原の顔は苦悩で歪んでいく。


「僕は…、賀川先生にそうやって謝ってほしいわけじゃないんです。ただ……」


高原はそこで言葉を切って、真琴と同じように唇を噛んだ。そして、自分の思いを言葉にできずに、ただ真琴の目をじっと見つめた。




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