恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜





「……わかってます。でも、賀川先生のことが、好きなんです。自分でもどうしようもできないんです」


「…それに、高原先生だって知ってるでしょう?私が婚約してるって…」


畳みかけるような真琴の言葉に、高原は諦めてくれるどころか、いっそう腕の力を強めた。


「でも…!結婚はしてないから、まだ間に合います!もう一度僕とのことを考えてください」



同じような言葉を、同じような状況で、かつて真琴は聞いたことがある。


想い人が結婚することは分かっているのに、それでも想いが募ってしまう恋心は、真琴も経験済みだ。
心が切り刻まれるような切なさは、言葉では表現できないほど辛かった。



初めて「好きだ」と言ってくれたあの時の古庄と同じように、高原は想い、抱きしめてくれているのかもしれない。


でも、真琴の心はあの時と同じではなかった。
あの時、真琴は抱きしめてくれていた古庄のことが、どんなに辛く痛みを抱えようとも、心の底から好きだった。

そして今は、あの時よりももっと強く深く古庄のことを愛している。




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