恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「私はこの子の父親のことを誰よりも愛してるし、この子のためにも幸せな家庭を築きたいと思ってる…」
高原は真琴を捕らえる腕に力が入らなくなり、顔色を変え、真琴の顔をただじっと見下ろした。
「近いうちに籍も入れるし、妊娠していることも年明けには公表するつもりよ」
そう言いながら真琴は、高原の腕からそっと抜け出し、2,3歩後ろに下がって向き合った。
「高原先生には、そんな風に人を想える心があるんだから…。これから、高原先生を一番に想ってくれる人に必ず出会えるはずだから…。その人に出会えた時には、そんな風にその人のことを想ってあげてね」
高原の真剣な想いに、同じ想いは返せないけれども、誠意だけは解ってもらいたい…。そう思って、真琴は真っ直ぐに高原を捉えた。
「……人の心は、そんなに簡単じゃありません……」
真琴への想いどころか、人生の全てを諦めてしまったような目で、ポツリと高原がつぶやく。
「…そうね。私も経験があるから、そう思うのは解るけど…。あなたを幸せにできるのは私じゃない。高原先生には、自分が幸せになれる道を探していってほしいと思ってる…」