恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
クリスマス Ⅱ
一方の古庄は、真琴が窮地に立たされていたことなど知る由もなく、うすら寒い廊下の片隅に佇んで、相変わらず佳音の相手をさせられていた。
とっぷりと日が暮れ、クリスマスイブというのも手伝って、薄暗い校内には人影もない。
もうとっくに勤務時間も終わっている。
真琴が一人、アパートの部屋で待っていることを思い描いて、古庄は気が急いた。
今日は約束の金曜日ではないけれども、「一緒にいよう」と書いたメモ用紙を、朝の職員室で真琴に渡した。
それを読んだ真琴は何も言わなかったが、優しい眼差しを向けて頷いてくれた…。
先ほどから何度か、「もう帰ろう」というニュアンスのことを佳音に持ちかけているが、佳音はその意を解さずとりとめのないことをしゃべり続けている。
よく聞いていると、昨日もそれ以前も聞いた話題だった。要するに、佳音は話を聞いてほしいわけではなく、古庄を自分に引き留めておきたいだけなのだ。
いつもの古庄なら、時間の許す限り佳音に付き合ってあげるのだが、今日ばかりは早く帰りたい思いの方が強かった。というより、真琴のことが気になって話など耳に入っていなかった。