恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「森園…、もう帰った方がいいな」
佳音の話が少し途切れた時、しびれを切らして古庄が切り出した。
古庄に対するときだけは、いつも明るい佳音の表情が途端に曇る。
「まだ、大丈夫。まだ6時になってないし」
古庄と二人だけの時間を1分でも長引かせたいのだろう、佳音は必死で古庄を引き留める。
これ以上佳音の他愛もない話には付き合っていられないと考えた古庄は、佳音の言葉を聞き流して切り上げようとする素振りを見せた。
すると、佳音は焦り始める。
唇を噛むと、思い切って本当に話したかったことを持ち出した。
「先生。今日は…クリスマスイブだね…」
「…そうだな」
新たな話題が持ち出されても、古庄は生返事をして受け流そうとした。
「こんな日は、独りでいるのって寂しいよね…」
「うん…」
佳音は“独り身”の古庄も、寂しいクリスマスを過ごすものと思い込んでいるのだろうか…。
どちらにしても、この話も長引かせたくない。古庄は佳音に微笑みかけるとおもむろに背を向け、職員室へと戻ろうとした。