恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



佳音の告白は、聞き慣れていることもあって、何の驚きも伴うことなく古庄の耳の中に入ってきた。

その「好き」というのは、生徒が教師を尊敬し慕う時に言う意味ではないと、すぐに解った。


佳音はずっとその心にあった想いを告白するために、クリスマスイブという特別な日を選んで意を決したのだろう。


古庄の顔をまっすぐに見上げるその大きく綺麗な目から、感極まって涙が溢れだしてくる。


しかし、古庄は佳音の望んでいる言葉を、この時ばかりは答えてあげられなかった。

佳音の心を埋めてあげるということは、その想いに応えて恋人になるということだ。


かと言って、他の女子生徒から告白された時のように、はっきりと自分の気持ちを宣言することもできなかった。
いつものように答えてしまったら、以前真琴が「かわいそう」と指摘してくれたように、佳音を深く傷つけてしまうだろう。


佳音の頬を伝う涙を見つめながら、古庄は考えた。
過敏で傷つきやすくなっている佳音に対して、どうやって答えるべきかを。



「……森園は、これまでもこれからも、俺の可愛い生徒だよ」



困惑を押し隠すように、古庄はまっすぐに佳音を見据えながらはっきりと言った。



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