恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜





――生徒以上には思えない…



そう言っている古庄の言葉の意味を考えて、佳音の今にも壊れそうな表情に影が差し、哀しみの色が加わる。


古庄は佳音を慰めるために、薄く微笑みかける。
端正な容姿により作られる完璧で優しい微笑みは、佳音の恋心をいっそう切なく募らせるだけだった。


佳音の双眸からはもっと涙が溢れだし、唇は細かく震え、もう何も言葉にならなかった。



「ずいぶん暗くなってしまったから、もう帰りなさい」


古庄は佳音の涙を拭ってあげることもなく、背を向けた。
泣いている佳音をそのままにするのは心が残ったが、これ以上の優しさをかけるのは却って残酷だ。


古庄は歩を進め、職員室へたどり着くと、佳音の方へ振り返ることなくそのドアの向こうへと姿を消した。






古庄が真琴のアパートへ帰ると、真琴も今帰り着いたという感じで、まだコートを着ていた。


痩せてしまった上に疲れで青白い真琴の顔を見ても、古庄は心配するどころか、自分の心がホッと落ち着くのが分かった。
それほど、佳音に告白されたことは、古庄にとって思ったよりもショックが大きかったらしい。



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