恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
真琴の同意などなく、彼は真琴を抱きしめるかもしれない。真琴の意志に反して、彼の想いが高じてキスをするかもしれない…。
それは誰でもない自分が、かつて真琴にそうしてしまったように…。
だから、高原がそんなことをしでかさないためにも、目を光らせなければならないし、これ以上高原の想いが募らないようにするためにも、真琴に指輪という“印”を着けてもらう必要があった。
非の付けどころのないほど完璧なイケメンといわれる古庄でも、心底惚れている真琴のことに関しては、悲しいくらいただの男にすぎなかった。
夕方になり、真琴が帰宅する準備を始める。
いつもよりも少し早く仕事を切り上げているのは、二人のための夕食の準備をするためだと理解して、古庄はむず痒いような気持ちで真琴の行動を見守った。
「それじゃ、お先に失礼します」
いつもと同じ真琴の言葉だけれど、その言葉の奥にある余韻を感じながら、古庄も含みを持たせて言葉を返す。
「お疲れ様」
真琴は古庄へと視線を向けて、恥ずかしそうにニコリと笑った。
その笑顔がたまらなく可愛くて、古庄は思わず顔がだらしなく緩んでしまう。
こんな時は、窮屈な秘密も“悪くないな”と思ってしまうのだった。