恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「自転車で行っちゃダメですよ。私の車を使ってください」
と、自分の車のキーを古庄に差し出す。
確かに真琴の言う通り、自転車だとケーキはぐちゃぐちゃになってしまうだろう。
古庄は肩をすくめてキーを受け取ると、気を取り直してドアの向こうに姿を消した。
ちゃんとした洋菓子店のケーキは、予約をしていないと購入するのは無理だった。
甘いものはあまり好物ではないけれども、この日の古庄はあきらめたりしなかった。足取り軽く、次の行動に移す。
大型スーパーにまで足を延ばすと、様々な大きさのケーキが山と積まれていて、ホッと胸をなでおろした。
同じようにケーキを買い求めるカップルや、クリスマスのための買い物をする家族連れに、自然と古庄の目は向いてしまう。
去年までの自分には興味もなく、そんな光景に目を止めることもなかったのに、今は自分も同じ幸せの中に身を置いている――。
その現実を噛みしめると、真琴と結婚して本当に良かったと思った。
真琴のアパートに帰ると、部屋の中にはキャンドルが灯され、淡い間接照明に照らされた料理たちがテーブルの上に並んでいた。