恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
――あっ、ローストビーフってこれか…!
古庄は真琴にケーキを手渡して、皿の上に並べられた薄切りされた牛肉を確認する。
「本格的な飾りつけはしなくても、こうやってキャンドルを灯してしまえば、クリスマスっぽく見えるでしょう?」
真琴はそう言いながら、古庄が買ってきたケーキもテーブルの上に並べる。
「そうだな。せっかくだからご馳走と一緒に写真を撮ろう」
「えっ…!写真ですか?」
古庄の提案に、突然真琴は戸惑ったような声を上げた。
「うん、二人の写真って、撮ったことなかっただろ?いい記念になるし。君のスマホでもいいよ」
そんな風に古庄は軽く言っているが、真琴は古庄と二人きりの写真を撮ることには抵抗があった。
女子生徒の多くは、古庄と二人きりの写真を撮りたがる。
そして、いつもそれに快く応じている古庄にとって、写真なんて深い意味のないことなのかもしれないが、真琴にとってはそうではなかった。
古庄と並んだ自分を、客観的に見たくない。
あまりにも完璧な古庄の横にいると、あまりにも自分の平凡さが際立ってしまう。古庄に似つかわしくない自分を、自覚するのが怖かった。