恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「嫌なのかい?…でも、俺は真琴と二人の写真がほしい。」
「…嫌じゃ、ありませんけど」
その真琴の一言を聞いて、古庄はニッコリと笑い、テーブルの上にあった真琴のスマホを手に取りカメラを起動させる。
腕を伸ばしてスマホを掲げると、もう一方の腕で真琴を抱き寄せた。
真琴は緊張して、うつむき気味に顔をこわばらせる…。
「ローストビーフって、さっき俺、肉のロースと牛肉ってことかと思ってたよ」
「………は?」
思いがけない言葉に、真琴は反射的に顔を上げた。
「だから、『ロース』と、『ビーフ』、だよ」
「………!?」
古庄らしい天然ボケに気が付いた真琴が、思わずプッと吹き出す。その瞬間、古庄はシャッターを切った。
楽しそうに両手で口を押えて笑う真琴を腕の中に抱えながら、古庄は続けざまに撮影ボタンを押した。
古庄に包まれて、その優しい腕を感じた拍子に、真琴はつい数時間前、学校で自分の身に起こった出来事を思い出した。
高原に抱きしめられながら、心の中で必死に古庄を呼んだことを…。
「やった!君の可愛い笑い顔、ばっちり撮れたよ」
古庄も楽しそうに笑いながら、自分の腕の中にいる真琴に語りかけた。