恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
けれども、真琴は何も答えられず、古庄の硬い胸に自分の顔を押し付けた。古庄の背中に腕を回し、ギュッとそれに力を込める。
「………真琴…?」
戸惑ったような古庄の声を聞いても、真琴は顔を上げられなかった。
自分の心の負担を軽くしてもらうために、いっそのこと今日あったことの全てを、古庄に打ち明けてしまおうかと心に過る。
何よりも、古庄との間には秘密を持ちたくない。
でも、真琴は思い止まった。
二人で一緒に過ごせるこの幸せなクリスマスを、余計なことを言ってぶち壊したくない。古庄の気持ちを煩わせたくないし、高原との関係も悪化させたくない。
これは真琴の心の中だけで処理して、終わらせるべきことなのだ。
苦しい感覚が通り過ぎていくのを待つ間、真琴は唇を噛んで古庄の胸に顔をうずめた。
古庄は何も問い質すことなく、真琴の肩を抱いて、その懐へと抱え込んだ。
――真琴が佳音とのことを、何か勘付いているのではないか…。
先ほども感じた不安が、不意に古庄に襲ってくる。けれども、何も言い出せず、ただ真琴を抱きしめることしかできなかった。
二人きりのクリスマス……。
その幸せに包まれながら、その幸せでは洗い流せない〝秘密〟という名のしこりが、いつまでも二人の心を苛んだ。