恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
キャンドルの灯に照らされたほの明るい部屋の中で、二人はお互いの存在を確かめるように、しばらく抱きしめ合っていた。
「……来年のクリスマスは、3人になってるな……」
背中に回す真琴の腕の力が緩んできたのを確かめて、古庄が口を開いた。
するとようやく、真琴が腕の中で顔を上げる。
「今だってお腹にいるんですから、本当は3人なんですよ。でも今年は、こうやって過ごせる最初で最後のクリスマスなんですね…」
「そういうことだ。来年からは君を独り占めできなくなる」
古庄がそう言うと、真琴は可憐な笑い声をもらした。
「さあ、食べようか。さすがに腹が減ったよ。君の作った『ローストビーフ』、美味しそうだ」
真琴は表情に可笑しさを加えて、もっと笑顔になった。
「ちょっと待っててください。スープを温め直しますから」
そう言いながら台所に向かう真琴の後姿を、古庄が見守る。
スープに火を入れながら、料理の前に座って待っている古庄を、真琴が確認する。
そんな何でもないことを、お互いがとてもかけがえのないものだと思った。
「秘密」によって護られているこの狭いアパートの部屋にいる時だけは、何を気にすることもなく、どんな時よりも幸せを感じられた。
二人は、今まで生きてきた中で、一番幸せなクリスマスを過ごした。