恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「…あ、ありがとうございます」
真琴が頭を下げながら受け取ると、どこからともなく拍手が起こり、職員室は喜びに包まれた。
真琴の隣に並ぶ校長や教頭、事務長の管理職達に、“妊娠”の報告をして、再び話し合いが持たれたのは冬休み中のことだった。
「…どうして、年度末まで待たなかったんですか?」
いっそう面倒な状況になることに、教頭からはうんざりした表情で、結婚した時と同じような小言をこぼされた。
「待てるわけありません。教頭先生は、夫婦なのに何もせずに我慢しろとおっしゃるんですか?」
古庄は責められているにもかかわらず、窮するどころか心のままを語る。
相手が管理職というのもはばからない古庄の本音を聞いて、真琴は言葉もなく顔を赤らめた。
「いや…、そういう意味じゃない。子どもができないようにすることも可能なんだから…」
素直すぎる古庄の言い分に、教頭がたじろいで言葉を詰まらせると、
「まあ、結婚してるんだから、子どもを授かるのは自然なことだ。少子化のこのご時世、子どもは一人でも多く産んでくれた方がありがたいんだから!」
と、相変わらず細かいことは気にしない豪快な校長は、そう言って取り成してくれた。