恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「病気じゃないから、休職扱いにもできないし…」
事務長と教頭は、口々に問題点を指摘し、さすがに真琴も口を閉ざしてしまった。
自分たちの行いが、これだけ周りの人に迷惑をかけてしまうことを痛感して、本当に申し訳なかった。
「しょうがない。やはり今までの案どおり、今年度末で古庄先生には異動してもらって…」
と、教頭が言いかけた時、古庄が顔を上げる。
「…あの、賀川先生には4月から年次休暇を取ってもらって下さい。4月の賀川先生の授業は、僕が代講しますから」
古庄のこの提案に、一同は虚を衝かれたように押し黙った。
「代講するって…!賀川先生の授業は、世界史だぞ?!お前に出来るのか?」
校長が目を丸くして、声を裏返した。
「同じ地歴科の免許ですから、地理専門の僕でも世界史は教えられます」
と、古庄はうなずく。
「いや、免許の話じゃなくて、ちゃんとした授業ができるのか…って話だ」
「大丈夫です。夜、自宅に帰ってから、真琴……賀川先生に教えてもらって、一緒に準備をすればなんとかなります」
古庄はそう言いながら、真琴の意思を確認するように目を合わせ、優しくニコリと微笑んだ。
しかし真琴は、心配そうに眉を寄せる。