恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
本当ならば、古庄も間髪入れずに下校して、少しでも長く真琴といる時間を持ちたいところなのだが、この日は生徒会の執行部会があり、古庄はそれに付き合わねばならなかった。
まんじりとした時間を耐えて帰途に就けたのは、いつもと変わらない夜の7時ごろ。
それから即行で、真琴のアパートへと自転車を走らせた。
息を上げながらチャイムを鳴らすと、軽快な足音が聞こえてドアが開いた。
「おかえりなさい」
微笑みをたたえながら、真琴から発せられるその言葉が「いらっしゃい」ではないことに、今更ながらにキュンとときめいてしまう。
「ただいま…」
と古庄がつぶやいた今この瞬間から、二人きりの週末が始まる。
期待に胸を高鳴らせながら、古庄は愛しい人の存在を改めて確かめた。
真琴は夕食を作っていた最中だったらしく、すぐに作業に戻った。
仕事をしていた時の服装のまま、エプロンを着けて台所に立つ姿は、古庄の心を甘くくすぐる。
「帰りにスーパーに寄ったら、豚のヒレ肉が安かったんです。だから、今日はヒレカツにしました。古庄先生、っと……和彦さん。好きですか?」
キャベツの千切りをしながら、そんな風に真琴が声をかけてくる。