恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
2年部の教師たちは、真琴の周りに群がり、その驚きや祝福の言葉を口々に表現してくれた。
だだ一人、前もってこの事実を知っていた高原を除いて。
高原は婚約指輪の時と同様に、遠くから真琴の様子を黙って窺っているだけだった。
「超真面目な賀川先生が、できちゃった婚なんて驚いたなぁ~」
その事実の背景に複雑な事情があるかもしれない…なんて、推し量るデリカシーなどない同僚の戸部が、あっけらかんと言い放つ。
――ホントは、『できちゃった婚』じゃないんですけど……
真琴はそう思いながら、戸部へはにこやかな作り笑いをした。
「その真面目な賀川先生を、真面目たらしめないほど、相手の人は素敵なんでしょうね」
ニッコリと笑いながらそう言ってくれたのは、真琴とも仲のいい石井だ。
真琴はそんな同僚たちの言葉に、恥ずかしそうに肩をすくめるしかない。
「相手の人」である当の本人の古庄は、何食わぬ涼しい顔でそんな真琴の様子を見守り、
「おめでとう」
と、含み笑いをしながら、他の同僚たちと同じようにお祝いの言葉を贈ってくれた。
「…あ、ありがとうございます」
真琴はぎこちなく、頭を下げるしかない。
本来なら一緒に祝福を受けるべき古庄からそう言われて、どんな顔をすればいいのか分からなかった。