恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
要するに、佳音は修学旅行に行くことを渋っているらしい。それを、古庄は何としても佳音を旅行に連れて行こうとしている…。
「…それじゃ、これからお伺いしてもよろしいですか?参加届けの用紙をお持ちしますから、それに書いてもらって…。はい、よろしくお願いします」
古庄は受話器を置くとすぐに、自分の机に取って返して帰り支度を始める。何も書き込まれていない修学旅行の参加届けをクリアファイルに挟み、それを手に席を立った。
古庄が名残を惜しむように、視線を向けてくれたことに気が付いていたけれども、真琴は顔を背けとうとう視線を合わせることはなかった。
他にも修学旅行に参加しない生徒はいるのに、どうしてそこまで古庄が佳音の参加にこだわるのか、真琴には理解できなかった。
佳音と「一緒に旅行に行きたい理由」が何かあるのかもしれないが、古庄はそれを真琴に話してくれる気配さえない。
それに引き替え自分に対しては、「旅行に行かない方がいい」と古庄は発言した。
そのことが真琴の心に引っかかって、怒りにも似た感情が真琴の中に立ち込めてくる。
古庄の言葉を思い出しただけで、真琴の目には再びジワリと涙が浮かび、机に着いたまま頭を抱えた。