恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜




突然のことに、真琴も心にフィルターをかけられなかったのだろう。無意識に古庄へと視線を投げ、二人の眼差しは複雑に絡み合った。


とっさに真琴は目を逸らし、足早にそこを立ち去ろうとした。

古庄はキュッと唇を噛むと思い切って足を踏み出し、真琴を追いかけてその腕を掴む。


「……なに、するんですか…!」


声を潜めて発せられた真琴の抗議は聞き入れず、生徒会室まで引っ張ってきてその中に閉じ込めた。


乱雑に散らかった暗い生徒会室の中に入ったと同時に、有無を言わさず、古庄は真琴を腕の中に抱きしめる。


想いが募って、何も言葉にならなかった。

唇を噛みしめたまま、自分の中にある混とんとした想いの全てを吐露するように、古庄は真琴をきつく懐に抱え込んだ。



古庄に抱きしめられて、真琴は抵抗することもなく、逆につまらない意地を張っていたことに後悔した。


この腕の中にいられることが自分の一番望むことで、そのためだったら自分の全てを投げ打ってもいいとさえ思う。

あまりの愛しさに胸の動悸が激しくなり、心が切なくギュッと絞られる。
真琴はしばらく目を閉じて、愛しい人に抱きしめられるこの幸せな息苦しさを味わった。



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