恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
さすがにベテランの域に達しつつある石井は、その場でそわそわと事の成り行きを見守るだけだった平沢に振り向いて、誰もが適切だと思う指示をした。
平沢に肩を抱かれて佳音の後姿が見えなくなると、教員一同は緊迫から解き放たれて椅子に座り込んだ。
「あぁ~…。良かった……。無事に見つかって……」
学年主任が椅子の背もたれにのけ反って、目を閉じてため息を吐く。
「ホント、一時は最悪のことも考えちゃいました」
佳音の捜索にあたっていた担任の一人も、そう言いながら軽く笑った。
その笑いに伴い、和やかな空気が辺りに満ちた。
「…さて、スキー教室のインストラクターにも連絡を入れて、校長にも報告を……」
と、学年主任が携帯電話を取り出したところで、真琴の悲痛な声が一同の安堵を切り裂いた。
「……待ってください!!古庄先生が、まだ戻って来てません!!」
一同はその事実に気が付いて、顔を見合わせた。
もしかして、佳音を探しに行った古庄の方が遭難してしまったのではないかという懸念が、教員たちの間に広がる。
「古庄先生はリフトに乗って上がって行ったから、コース沿いを探してるのかな?」
「彼は、携帯を持って出てないから、森園が見つかったことも知らせようがないし…」