恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「だけど、彼は子どもじゃない。状況を見て、危ないと思ったら捜索をやめて帰ってくるよ」
同僚の担任たちは一様にそう楽観視しているらしく、その表情に緊迫感はない。
「とにかく…、もう夕食の時間だ。大広間で生徒たちも待ってるだろうから、行かないと。もし夕食が終わっても古庄くんが戻ってなければ、それから対処しよう」
佳音が見つかったことで、すでに肩の荷が下りてしまったのだろう。学年主任がそう言うと、皆はそろって大広間へと足を向けた。
「…君たちは、森園を着替えさせて、先に話を聞いてくれ。今は他の生徒と一緒に行動させない方がいいだろうから、食事の時間を少しずらそう」
真琴と石井を振り返って、学年主任がそう指示する。しかし、
「……分かりました」
と頷いたのは、石井だけだった。
立ちすくむ真琴は、今もまだ戻って来ていない古庄のことが心配で、それだけで頭がいっぱいになっていた。
もうすでに夕闇も濃くなって、明るいロビーからは外の様子がよく確認できないけれども、先ほどよりも雪が一段と激しく降っているようだ。
「賀川さん。それじゃ、私たちは一旦部屋に戻って…」