恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
帰ってきて…! Ⅱ
「もりぞの――――っ……」
もう何度、こうやって叫んだろう。
何度叫んでも佳音の返事はなく、古庄の声は降り続く雪とともに、空しく風に流されていくばかりだ。
おびただしい雪の粒は、古庄の周りを取り巻いて、前後左右も分からなくなる。
真っ白な世界は徐々に闇を帯び、視界が狭くなったと気づいた時には、もうとっくに日が暮れてしまっていた。
かろうじて目が効く手元の、スノーウェアと手袋をめくって腕時計を確認すると、既に6時を過ぎている。
一旦、探索は中断して戻らなければならないと思ったが、雪と夕闇で方向感覚を失い、どちらが帰り道か分からなくなってしまった。
「……まいったな……」
古庄は途方にくれて、絶え間なく雪が落ちてくる暗くなった空を見上げた。
佳音は寂しさのあまり、自分から命を投げ出そうとしている…。
そう思い込んだ古庄は、佳音を探し出すことに躍起になっていた。
あれからリフトで山に登ると、佳音がいたであろう初級者コースを降りながら、時にはコースを離れ山に分け入り、丹念に佳音を探して回った。
2度ほど初級者コース沿いを探しても見つからなかったので、中級者コースに行ったかもしれない…と思い、そちらの方へと上がって来ていた。