恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
天井のある雪洞を掘ることは叶わなかったので、スキー板を渡して天井代わりとし、スキー帽の上からウェアのフードをすっぽりと被って、自分で作った自分の居場所に、小さくなってうずくまる。
激しく動いて温まっていた体も、すぐに冷え切ってしまった。特に手足の先は、すでに感覚がなくなっている。
「……真琴……」
古庄は絞り出すように、その名を呼んだ。
何もするべきことがなくなると、古庄の頭の中を占拠したのは、真琴のことだけだった。
無性に、真琴に会いたくてたまらない。
見つめ合って、抱きしめて、キスをして…。真琴のその温もりが恋しくて、たまらなくなってくる。
しかし、その当の真琴は、きっと今頃心配しているだろう……。
真琴とお腹の赤ちゃんは「俺が守る」と断言していたのに、こともあろうにこのザマだ。守るどころか、とてつもなく余計な心労をかけてしまっている。
古庄はその情けなさに唇を噛んだが、今は何としてもこの窮地を脱しないと、もう二度と真琴を抱きしめることもできないし、守ることだってできなくなる。
「…絶対に、生きて帰るから…。真琴、心配するな…って、…無理だな」
古庄はそうつぶやいて、薄く笑う。