恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
しかし、佳音はしばらく沈黙する。
それを、彼女と対峙する教員三人は粘り強く見守った。
「…全然、面白くない…。修学旅行になんか、来なければ良かった…」
ようやく佳音が口を開くと、それから話が回り始める。
「森園さんは、参加届けの提出が遅れていたみたいだけど、初めは修学旅行へ来る気がなかったの?」
「…ホントは来たくなんかなかった…。でも、古庄先生が……」
「…古庄先生が…?」
「古庄先生が、『一緒に思い出を作ろう』って言ってくれたから……」
「それで、森園さんは古庄先生と思い出を作りたいと思ったのよね?」
いっそう優しく語りかけられる石井の声に、佳音は微かに頷く。
「だけど……、古庄先生。全然かまってくれないし……他の女子たちとは楽しそうに話もしてるのに……」
これが、こんなことをしでかした佳音の動機だった。
「古庄先生」という言葉を聞いて、平沢の表情が険しさを帯びる。でも、平沢も場の空気を読んで、横から口出しはしなかった。
真琴も予想していた通りの佳音の言葉だったが、依然黙って成り行きを見守った。