恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜




石井と真琴は顔を見合わせて、石井の方が平沢に答える。


「古庄先生は、まだ戻って来てない……。森園さんを探しに行ったまま、この雪で立ち往生してるんだと思う」


佳音はその事実を聞いて、泣き顔をいっそう強張らせた。
自分のしてしまったことのあまりの深刻さに、後悔して涙をあふれさせる。


真琴も、再び流れ出しそうになる涙を必死で抑え込んだ。
今はただ、戻ってこない古庄のことが心配で心配で…、何も言葉を発することもできなかった。






冬枯れの木々の間を渡る風の音を聞き、雪が舞い落ちる暗がりを見つめながら、古庄はただじっと時が過ぎゆくのを待っていた。


辛すぎる現実を少しでも意識しないため、古庄の思考は真琴との幸せな思い出を反芻する。


放課後の教室で初めて想いを告げ、キスをした日のこと。
暗い職員室で抱きしめ合い、想いが通じ合った日のこと。
婚姻届を書いてもらい、役所に出しに行った日のこと。
しだれ桜のモザイク画の前で、きちんとプロポーズした日のこと。

…そして、初めて真琴と結ばれた日のこと…。





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