恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
婚約指輪 Ⅰ
先ほどとは打って変わって、ゆっくり丹念に愛されたとはいえ、終わった後の心地よい疲労感は、真琴を眠りに誘う特効薬だった。
胸を上下させる息が整うのも待たずに、何も身に着けないまま、真琴は目を閉じ眠りに落ちていく。
この時を待っていたかのように、古庄は腕の中の真琴の頭をそっと枕に預け、起き上った。
古庄自身も裸のまま、自分のリュックサックを物色して、中からタコ糸とネームペンを取り出す。
今はちょうどいい具合に、真琴の左手が見えている。本人に知られずに指輪のサイズを測る絶好の機会だ。
ベッドサイドのランプを点けて、ほのかな明かりで真琴を照らし、その薬指にタコ糸を巻きつける。
「…おっと、第2関節あたり…だったな」
タコ糸が重なって2本になった所にペンで印を付けようとした瞬間、微かな刺激を感じたのか、真琴が寝返りを打った。
左手は体の下になり、見えなくなってしまった。タコ糸も薬指に巻かれたままだ。
困ってしまった古庄は、再び真琴に寝返りを打ってもらおうと試みた。
「真琴……」
と声をかけ、上になっている右肩をそっと押してみる。
すると、古庄の意志に反して、真琴は目を覚まし、うっすらと目を開けてしまった。