恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
真琴は石井と平沢と共に、部屋へ帰ることもできず、同じロビーの反対側の隅で、古庄が帰ってくるのをひたすら待っていた。
真琴の涙も枯れ果てたように止まったかと思うと、押し寄せてくる最悪の状況に脅かされて、再びこぼれ落ちたりを繰り返した。
テーブルを挟んで向かいに座る平沢も、涙が滲んでくるのを止められないようだ。
各部屋の見回りをしてきた戸部ともう一人が、状況を確認して、何も変化がないことを聞いて肩を落としていた。
その戸部が不意にホテルの正面玄関へと目をやった時………、
その向こうからスノーウェアを着た長身の男が、自動ドアを開けて入ってきた。
「――ああ!古庄先生っ!!」
戸部の一言を聞いて、教員たちの視線がそちらへ向いた。
と同時に、皆は椅子から立ち上がって古庄へと駆け寄る。
「良かった…!とにかく良かった!」
「体は大丈夫か?怪我とかは…?」
「心配したぞ。いったい何があったんだ?」
口々に男性教員たちから声をかけられて、古庄は申し訳なさそうに肩をすくめた。
「ご心配をおかけしました。暗くなってしまったのと、雪が降ってきたので立ち往生してしまって…。本当に申し訳ありませんでした」