恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
帰ってきたばかりで、体力も随分消耗しているに違いないのに、古庄は礼儀正しく一同に向かって深々と頭を下げた。
その様子を少し離れたところから見守って、石井が真琴に微笑みかける。
「…ね?古庄くん、ちゃんと帰って来てくれたでしょ?」
その言葉を聞いて、真琴も今目の前で見ている光景が幻ではないと、やっと確信できた。
他の教員と同じように、古庄の側に駆け寄って行きたかったけれども、真琴の安堵はあまりにも深くて体さえ動かせなかった。
「…あの、森園は見つかりましたか?」
結局佳音を見つけられずに戻ってきてしまった古庄は、謝罪の次に先ずそのことを尋ねた。
「ああ、森園はとっくに見つかってる。後で事情は話すから。今はとりあえず、お前の方だ。そこに座って、体を温めろ。何か温かい飲み物でも、持って来てやって」
校長がそう言って、ロビーの中央に置かれているストーブの側の椅子を指し示す。
「雪も降って暗い中なのに、よく戻って来れたなぁ?!どうやって山を下りたんだ?」
そう質問しながら、学年主任はとりあえず古庄をその椅子へと古庄を迎えようとした。