恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「…それは…、雪が止んだんです。今は月が出てますよ…」
と、古庄はその質問に答えることよりも気持ちが他へと向いているようで、促された椅子に座ることなくロビー全体に目を走らせている。
その不自然な行動を、周りの教員たちも不審そうに見守っていると、古庄はロビーの隅へと目を止めた。
その視線の先、立ちすくむ真琴のもとへとまっすぐに歩み寄り、真琴の泣き腫らした顔を見下ろして、真っ赤になっている目をじっと見つめた。
「……心配をかけた。……すまなかった」
本当に帰ってきて、本当に目の前にいる古庄から発せられた声を聞いて、真琴は胸がいっぱいになった。
何も古庄へ言葉を返せず、再び堰を切ったように涙が溢れ出てくる。
真琴がうつむいて両手で顔を覆うと、古庄はさらに一歩歩み寄って真琴を愛おしそうに見つめ、その両肩に優しく手を置いた。
――………あっ………!!
その瞬間、この光景を見守っていたその場にいた全員が、琴線が弾かれたように一つの事実に気が付いた。
誰も口に出して指摘できないほど、その事実はあまりにも衝撃的で、息を呑んで平静を保つのが精一杯だった。