恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「嘘を吐く…と言うより、結婚のことを内密にしたのは、私の指示だ。彼女の意志でそうしてたんじゃない。それに、強引に結婚してしまったのは、古庄の方だよ。彼女はもう少しゆっくり…と思ってたらしいね」
「確かに、あの真面目な賀川さんがそんな秘密を抱えるなんて…。周りの人たちに嘘を吐かなければならなくなって、きっと苦しんでいたに違いない…」
石井が真琴の気持ちを推し量って、そんな風に代弁してくれる。
「古庄くんが、それだけ賀川先生に惚れてるってことなんだろうな…。古庄先生はあれだけのイケメンだから、君が彼にお熱なのは解るけど、いい加減現実に気づいた方がいいかもね。賀川先生を逆恨みするのもお門違いだよ」
人目をはばからず古庄に色目を使っていた平沢に、いいかげん辟易していた戸部は、そう言ってピシャリと彼女を牽制した。
平沢はもうそれ以上何も言えず、複雑な感情をグッと呑み込むしかない。
そして、校長が真剣な形相で、一同に向き直る。
「…とにかく、今はまだ、二人の結婚のことが露見すると学校は混乱するだろうから、このことはこの場にいる先生方の胸に留めて、一切他言しないようにすること。飲み会や内輪での話でも、このことは話題にしてはいけません。本人たちに確認してもいけません。これは、校長命令です。いいですね!」