恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
一人一人と目を合わせて校長が確認すると、平沢を含めた教員たちは、無言で頷いて了承した。
ここでこうやって約束を取り付けても、どこからどうやって秘密がほころぶか分からない。
真琴と古庄が一緒に働ける、あと1か月半、何事もなく過ぎて行ってくれることを、校長も願わずにはいられなかった。
校長が他の職員たちを足止めしてくれて、古庄は、真琴と二人きりになれるように校長が計らってくれたと思った。
ロビーから廊下を伝いエレベーターホールへ、角を曲がって人目がなくなると、古庄は自分の体が疲れ切っていることも忘れて、前を歩く真琴に駆け寄った。
駆け寄ると…、もう自分が制御できなくなって、真琴を背中から抱きしめた。
真琴は一瞬ビクッと身をすくめたが、すぐに自分を抱きすくめている腕の持ち主を察して、立ち止まった。
「……会いたかった!…ただ、君に会いたかった…!」
真琴の耳元で古庄が声を絞り出すと、真琴の目にはまた涙が流れ出す。
もう古庄も戻って来て、何も心配することなどないのに、どうしてこんなに涙が溢れだすのか、真琴自身にも解らなかった。
涙で揺れる目で、自分を抱きしめる古庄の手に視線を落とし、そっと自分の手を重ねて囁いた。