恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
あの修学旅行で古庄が行方不明になった一件以来、真琴はほんの些細なことでも不安がった。
それほど、あの出来事は、真琴の心に大きなダメージを与えているらしい。
携帯は持っていたから、遅くなることを前もって連絡しておけばよかったのだが…。
「学校を出てから、森園の家に寄って来たから…」
古庄がそう説明するのを聞いて、真琴はいっそう複雑な表情を見せた。
「そうですか……」
気を取り直すような声を出してはいるが、佳音の話題が出ると、いつも真琴はこんな顔をした。
真琴は、佳音の気持ちを知っている――。
古庄に恋愛感情を抱く生徒は佳音だけではないが、佳音のそれは、他の生徒とは違う次元のものだということも…。
佳音の精神状態が健常ではないことも知っているので、平沢に対するように、相手にせずに無視するわけにもいかないことも解っている。
教師として真琴にも、佳音が健全に成長することを願う気持ちもあり、古庄が担任として、佳音を放っておけないことも十分に解っている…。
だからこそ真琴は、佳音のことに関して、古庄に何も口出ししなかった。