恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
修学旅行で佳音がしでかした事の一部始終も、真琴は何も語ることなく、古庄は石井から全てを聞いた。
真琴の中には佳音に対して様々な思いがあり、決して良質でない感情だからこそ、佳音の話題には触れたくないようだ。
自分の中にある負の感情を、必死で打消し、古庄には隠そうとしていた。
そして古庄の方も、そんな真琴の様子を敢えて指摘することはなく、ただ見守り、安心させることに努めた。
「やっぱり、俺のアパートに帰るより君の家に来た方が落ち着くな…。やっぱり夫婦は一緒にいるべきなんだな」
古庄は敢えて明るい声でそう言って、話題を変えた。
台所に立って、作っておいた夕食を温め直す真琴も息を抜く。
「もう少し…3月の終わりまで、あと一か月ちょっと、我慢してください」
四六時中一緒にいたがる古庄に対して、いつも真琴はくすぐったそうに答える。
「そういう意味じゃないよ。君が傍にいるとホッとして、自分が本来の自分に戻れる気がするんだ」
そう言いながら古庄も立ち上がり、真琴の傍まで来るとそっと背後から抱きしめた。
「出会ったばかりの頃は、君が隣にいるだけでドキドキして、自分が自分じゃないみたいに感じてたけど…」