恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
佳音の本当の気持ちは、もちろん彼女に訊いてみなければ判らない。しかし、おそらく『死にたい』というのは、古庄の気を引くための狂言だろうと真琴は思った。
佳音の本心は、恋い慕う古庄に、ただ側にいて欲しいだけなのだ。
それを古庄も解っているらしく、彼女の気持ちに応えられない故に、どう対処をするべきか迷っているようだ。
「森園さんのお母さんは、こんな夜遅いのに家にいないんですか?」
真琴も冷静に対処するために、状況を確認する。
「……森園の母親は、『彼氏』と旅行に行ってるらしい……」
それを聞いて、真琴は、あまりのやるせなさに目を閉じた。
実の娘が心から血を流して苦しがってるのに、母親の目は全く違う方を向いている……。
母親の方も、自分の辛さを誰かに慰めてもらいたいのかもしれないが、もう少し佳音を気にかけてくれていたら、佳音だってこんなに古庄に依存することもなかったのだと思う。
「……今すぐに、森園さんのところへ行ってあげた方がいいです。私の車を使ってください」
心の中には、複雑な感情が渦巻いていたけれども、真琴はキッパリと極めて明快にそう助言した。