恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「あの…!」
その時、半ば無意識に、真琴が古庄の背中に声をかけた。
古庄はドアから出て行く動きを止め、振り返る。真琴と目が合うと、真琴は唇を噛んでから、その言葉を絞り出した。
「…気を付けて……、行って来てください…」
何気ない一言に込められている深い意味は、古庄の胸にズキンと響いた。
引き留められているわけではないのに、真琴の傍を離れたくなくなってくる。
けれども、助けを求めている今の佳音は、放っておけない。
古庄は真琴の目を捉え、もう一度頷くと、思い切ってしんしんと冷えたドアの外へと飛び出していった。