恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
一つ一つを手に取って、真琴の指にはめてみたところを想像する。
「お相手の方のお誕生月は、何月ですか?」
「ええと…4月です」
「4月でしたら、誕生石はダイヤモンドですね。…それでしたら…」
と、更にいくつかの指輪を持ってきて、トレーの上に置いた。
――…うっ!!……た、高ぇ…!!
大きな石の付いた一つを手に取ってみて、その値段に古庄は内心跳び上がった。
「ご予算にもよりますが、婚約指輪でしたら宝石があしらわれた物が一般的です」
そんなアドバイスを受けながら、懐具合を考慮して、真琴が仕事中も着けていられるように、小さなダイヤモンドの付いたシンプルな指輪を選んだ。
「サイズはお分かりですか?」
そう尋ねられて、古庄は頷く。スーツの胸のポケットから、一筋のタコ糸を取り出して、トレーの横に置いた。
週末の夜、真琴が寝ているのを見はからって、苦心して計測したものだ。
「この、2つの印の間が、薬指の第2関節周りの長さです」
タコ糸の上を指し示しながら、古庄が胸を張って説明すると、
「かしこまりました。サイズを確認してみます」
と、店員は作り笑いをしてタコ糸の2点の間を計測する。