恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
命よりも大切な人
古庄が出かけて、真琴は一人きりになった居間まで戻り、その真ん中に座り込んだ。
古庄には、先に寝ているように言われたけれど、こんな気分でベッドに入っても、どうせ寝付くことはできない。
脱ぎ捨てられていた古庄のパジャマを手に取り、丁寧にたたむ。
古庄には見せまいと我慢していた不安と涙が込み上げてきて、真琴は手にある古庄のパジャマに顔を埋めた。
「…和彦さん…!」
名前を呼ぶと、涙がもっと溢れてくる。
平日の夜は、古庄のことが恋しくて切なくて、一人で眠るのは寂しいけれども、こんな風に泣いてしまうことなんてない。
古庄が側にいないだけでこんなに不安になるなんて、どうかしている。
自分はちゃんと自立した、もっと強い人間だったはずだ。
でも、あの修学旅行の雪の日に古庄が戻って来れなくなったのも、佳音が原因だった――。
真琴の中に、あの日、「古庄を失うかもしれない――」と思った恐怖が蘇ってくる。
今日は雪も降っていないし、古庄は雪山に出かけたわけでもない。必ずここに帰ってくる。
それは分かっていることなのに、一人でいることが、こんなに不安で怖くてたまらない。