恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「…ううん。あの子が自分で閉ざしてしまってる心の扉を開けてくれないことには、カウンセラーや私たちの言葉の真意はあの子には伝わらないわね……。ま、カウンセラーはその辺、扉を開けるのも上手なのかもしれないけど……」
と、石井はそこで言葉を切り、少し考え込んだ。
「今、あの子の頭の中に充満しているのは、あなたのことよ。あなたさえ手に入れば、すべてが解決して、自分は幸せになれると思い込んでる。あなたとのことがどうにかならない限り、前には進めないわね」
そう言われても、古庄が一番困っているのはそのことだった。
佳音の想いを退けるようなことを言ってしまって、彼女がもっと危うい方へ行ってしまうことが怖かった。
「…うん、どうにかしないといけないことは解ってるけど…。森園の想いに応えることもできないし…」
思い悩む古庄の顔を見て、その奥にある真琴の存在を、石井は読み取った。
佳音が生徒である…と言うこと以前に、あんなに純真な真琴と愛を交わしていれば、他の女性が古庄の心に入り込める余地などないだろう。