恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
佳音の逆上するような叫びを聞いて、また話がそちらの方に行ってしまい、肝心なことが話せなくなったと、古庄は内心で落胆する。
「どうでもいいんなら、今日だってここには来ていない」
「…じゃあ?私のこと、大事に思ってくれてるの?」
「もちろん、森園のことは大事だ」
「…先生はいつもそう言ってくれるけど、私はそんな風に感じない!ホントにそう思ってるんなら、証明して!!」
「証明って…」
古庄は絶句した。
誠意という目に見えないものを、今ここで佳音が理解できる形で示すなんて不可能だ。
こんなことを求めること自体、佳音にとって自分も信じるに値しない存在なのだろうと、古庄は額に手を当て、頭を抱えた。
その時、決意するように、佳音が大きな息を呑む。
「…先生…?私を…抱いてほしいの……」
潤ませた大きな目で古庄を見つめながら、佳音がそうつぶやいた。
古庄は表情を変えることなく、ただ黙って佳音を見つめ返した。
佳音のその要求を聞いても、胸はざわめくどころか、奈落の底へと突き落とされたような気分になる。
「先生に抱いてもらえたら、 他のもの全てが信じられなくても、生きていけるから…」