恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
自分の想いを遂げるために、佳音はさらに言葉を尽くして、古庄を説得しようとする。
しかし、古庄は佳音から目を逸らして、息を吐いた。
「森園のことが大事だからこそ、そんなことはできないよ」
古庄の返事を聞いて、佳音は顔を悲痛に歪めて唇を震わせた。
「…どうして?私が望んでるのに?!」
「俺が望んでないからだ。愛し合っていない相手とは、そんなこと、しちゃいけない」
明確に断言する古庄に、佳音は何とか取りすがろうと必死になる。
「…でも、男の人は好きじゃない相手とだってできるじゃない!」
「確かに、以前、お前を車に乗せようとしていた男たちはそうかもしれないな。でも、お前はそんな体だけが目的のヤツに抱かれて幸せか?」
「先生の場合は違う!少なくとも、私は先生のことが好きだから!!」
「…でも、俺は今まで、お前のことを一度だってそんな風に思ったことはないし、これからも思うことはない」
とうとう突きつけられた自分を拒絶する古庄の本当の気持ちを知って、佳音は衝撃を隠せなかった。
古庄の言葉は、佳音の心の中にあったほのかな望みさえも、粉々に打ち崩した。