恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「…私は、こんなに先生のことが好きなのに…。どうして先生は、優しくしてくれるばかりで…私のことを好きになってくれないの?今は先生を困らせてばかりだけど、好きになってくれたら、私……」
声を震わせて、うつむいて涙を拭いながら、佳音は言葉を絞り出した。
古庄は、ソファーに座ったまま佳音を見上げて、息を抜く。
「……森園…。俺には、もういるんだよ。一生を共にしたい、心から愛しいと思う大切な女性が……。その人を抱く時は、もう死んでもいいと思うくらい、ものすごく幸せなんだ。その幸せを思ったら、誰だろうと他の人に触れるなんてできないよ」
今まで知ることのなかった古庄の事情を知って、佳音は息を呑んだ。
うつむいていた顔を上げ、古庄を見つめ返す。
「…その人がいなかったら…。先生がその人と出会う前に出会えてたら、好きになってくれてたの…?」
「……そういう前とか後とかの問題じゃない。…俺にとってその人は、俺の人生の中でたった一人の人なんだ」
愛しい真琴を想いながら語る古庄の表情は、とても穏やかで幸福と喜びに満ち溢れていた。
そんな古庄の顔を見て、佳音は現実を悟った。