恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
女子生徒たちの目的は、本当にそれだけだったらしく、用が済むと一陣の風が去るようにいなくなってしまった。
「古庄先生の、よほどコアなファンクラブでもあるんじゃないんですか?」
面白そうに真琴がそう声をかけてきてくれたので、古庄も息を抜く。
そして、真琴の耳元に小声で囁いた。
「……俺のカラダのことを知ってるのは、君だけで十分だよ」
予想通り、てきめんに真琴の顔に火が付く。
「……職員室で、そんな話やめてください!!」
声を押し殺してそう言われ、真っ赤な顔で睨まれて、古庄も面白そうに顔をほころばせた。
こんな素直な反応を見せてくれる真琴が、可愛くてしょうがない。
幸せそうに笑いながら、古庄は机の上の新聞を手にすると、席を立って帰るそぶりを見せた。
「もう、帰るんですか?」
気を取り直して、真琴が尋ねる。
佳音の家から戻って来てから、古庄はまだ仕事という仕事はしていない。
「うん、部活に顔を出してから帰るよ」
――君の顔を見るために戻ってきただけだから…
古庄は微笑んで真琴に答えながら、職員室を後にした。