恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
そして、次の日。
自分のクラスの朝礼に行った古庄は、自分でも信じられない光景に出合う。
教室の佳音の席に、紛れもなく彼女自身が座っていたのだ。
昨日、あんなことがあった直後では、到底彼女は登校して来ないだろうと思っていたのだが…。
目の前の現実に、古庄は事が少し好転し始めたように感じて、希望の光が射しこんできたような気がした。
佳音は以前と同じように、教室の中で一人でいることが多かったが、休み時間ごとに職員室に姿を見せるようなこともなく一日が過ぎてゆく。
ところが、昼休みに昼食をとっていた古庄のところへやって来た。
久しぶり見る佳音の姿に、真琴をはじめ他の教員たちも、声を潜めて思わず凝視してしまう。
「…昨日も言ってたように、放課後に勉強を見てください」
佳音は古庄の傍らに立って、小さい声でそう依頼する。
古庄は佳音の方に向き直って、笑顔を作って頷いた。
「わかった。放課後、仕事がひと段落したら教室に行くから、そこで自習をしながら待ってなさい。ただし、そう長い時間はできないぞ。1時間だけだ」
「…はい。わかりました」
佳音は軽く一礼して、それだけで教室に戻って行った。