恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
以前の佳音なら、このまま古庄の側に居座り、離れることはなかった…。
この佳音の変化に気が付いて、真琴は、古庄と佳音の間に何かあったのだと直感する。
あの佳音の態度は、もう古庄のことは諦めた感じだったが、そうなるには佳音が古庄に「想いを打ち明ける」という前提が必要だ。
きっと佳音の胸の内には、到底消すことなどできない、古庄への激しい想いの火が渦巻いていたに違いない。
それを古庄は、どうやって消したのだろう。どうやって諦めさせたのだろう。
真琴の知らないところで繰り広げられた、二人の間の恋の駆け引きを想像して、真琴の胸がキュウっと痛みを伴って絞られた。
でも、このことは、真琴の方からあれこれ訊き出すことではない。時が来れば、きっと古庄の方から事の全てを話してくれる…。
真琴はそう信じて、自分を落ち着かなくさせる心のざわめきを、意識の脇に追いやった。
放課後、佳音との個別指導は淡々と行われ、あっという間に1時間という時は流れた。
古庄が担当する地理だけでなく、英語や数学などの教師から特別に作ってもらった補習用のプリントを一緒にするというかたちで、学習は進められていく。