恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄はあくまでも勉強を教えることに徹し、佳音も休んで遅れている分を取り戻そうとしているのか、とても真面目に取り組んだ。
…と言うより、どちらの方も、あの日佳音の家であったことを話題に持ち出さないために、敢えて勉強に集中しようとした。
真琴が、日課にしている放課後の教室の見回りで、二人がいる教室の横を通りかかる。
その時、開け放たれているドアから、二人が一つの机を挟んで向かい合っている姿が、真琴の目に飛び込んできた。
見てはいけないものを見てしまったような気がして、真琴の体は自ずとすくんでしまう。
すると、古庄の方は人の気配に気がつき、それが真琴だと判ると、ニッコリと真琴にしか向けない笑顔を見せてくれた。
真琴はその笑顔に応えたかったが…、少し口角を上げて笑い顔を作っただけで、そそくさと自分のクラスの教室へと向かった。
誰もいなくなった教室内を整理しながら、真琴の頭の中には先ほどの二人の姿が占拠する。
真琴を安心させようとしたあの古庄の曇りのない笑顔は、却って真琴の心に負担を強いた。