恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



古庄が一緒にいるのは「生徒」で、ただ単に個別指導をしているだけだ。
何も心配することなどなく、古庄だってあんな笑顔を向けてくれているのに、真琴は先ほど目にした現実を素直に受け入れられなかった。



――…もう、森園さんとは関わらないで…!



教師としてあるまじき感情が自分の中にあると知って、真琴は自分のことが疎ましくなった。



佳音がやっと前を向いて一歩を踏み出せたというのに、それを素直に喜んでいない自分がいる…。


そう思ってしまう原因は、言うまでもなく自分が古庄を恋い慕っているからだ。


彼に恋をしている女性は、佳音でなくとも彼に近づいてほしくはない。


古庄を恋い慕うが故のどす黒い感情が自分の中に沈殿して、真琴は息もできなくなりそうだった。


以前は、古庄を思い浮かべるだけで心が澄んで、幸福に包まれていたのに……。

古庄を恋い慕う心を、こんな卑しい感情と同居させてはいけない――。


そう思って、真琴は自分の心と必死に闘い、自分の奥底にある気持ちに、ひたすら気づかないふりをし続けた。



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