恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
佳音の心は前に進むどころか、まだ古庄に固執し、少しも変わっていない――。
もう、佳音とはこんな話はしたくなかったが、古庄はその落胆を押し隠すように、目を閉じ深く息を吐いて、佳音に向き直る。
「……そういうことはできない。って、この前もはっきり言っただろう?」
やはり変わることのない古庄の意志に、佳音は顔を悲しげに歪ませた。
「…先生に好きになってもらえないのは、…分ってる。だけど、自分の中の気持ちに整理がつかないの。…キスしてもらえたら、諦めきれると思うから…」
「キスだって、恋人同士がするものだ。それをしたから諦めるって、理屈に合わないだろう?」
首を横に振って取り合ってくれない古庄に、佳音はいっそう力を込めてその手を握って懇願する。
「先生はそう思うかもしれないけど、そうしてくれたら、私ちゃんと諦める。もう、こんな風に先生を困らせたりしない」
「…お前はそれでいいかもしれないけど、俺はそうはいかない。好きじゃない相手とそういうことをすると、本当に好きな人とそれをする時、そこに自分の純粋な想いが込められなくなる」
佳音が古庄の言葉の意味を考えて、理解していくにつれて、古庄の手を握っていた力が抜けて、目には涙が溢れた。