恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
細部まで完璧な古庄の容貌からじっと見つめられて、店員はたじろいだ。
そして、顔を赤らめさせて、ぎこちなく頷く。
「……しばらくお待ちください」
と、笑顔を作ってそう言うと、店の奥の方へと姿を消した。
それから古庄は、しばらくどころか、かなり待たされた。でも、ずいぶん無理を言っているようなので、今はただ我慢するしかない。
他の客や店員たちのチラチラと向けられる視線を気にしながら、古庄が大きな溜息を吐いた時、応対してくれていた店員が安堵の表情と共に現れた。
「系列店に、これと同じデザインの9号のリングがございました。それにこのメッセージを刻印いたしまして、今週の木曜日にお渡しできます」
「木曜日ですか!?」
思いの外早く受け取れるので、古庄も驚いて訊きなおす。
「はい。頑張らせて頂きました」
年配の店員は、年甲斐もなくはにかんで微笑んだ。
「ありがとうございます!!」
感激のあまり、古庄が店員の手を取って握手をすると、店員は顔を真っ赤にさせて言葉も返せなかった。
何はともあれ、1か月も待たされるのは回避できたみたいだ。古庄はホッと胸をなで下ろす。